今日は、少し変わったところから音楽をみてみましょう。
みなさんは、映画をご覧になりますか?私は映画が好きです。なかでも映画音楽が大好きです。
映像に音楽が入ることで、観る者の感情が増幅されるのがおもしろいからです。
映画音楽でもっとも有名なのはジョン・ウィリアムズでしょうか。『スターウォーズ』や『未知との遭遇』、『E.T.』、『インディ・ジョーンズ』など、観たことがなくても誰もが聞いたことのある曲を生み出しました。
オーケストラで壮大&重厚な音を奏でたかと思えば、1975年公開の映画『ジョーズ』では、たった2音でサメの到来を表現。最初に聴いたスピルバーグ監督も、冗談かと思ったそうです。まるでエンジン音のような2音のテンポを上げていくことで、確実に向かってくる恐怖を表しました。
キャッチーなメロディばかり注目されますが、「彼の曲には必ずBメロがある。彼が本当に書きたかったのはそこだったと思う」と、仲間から敬意をもって語られています。
定番メロディだけではありません。1960年公開のヒッチコックの映画『サイコ』でのシャワーシーン。ナイフを振り上げ振り下ろすだけという映像に、耳障りで不快な金属音を重ねることで観る者の恐怖心を煽り、一気に有名になりました。
すでにあるクラシックをもちいるところで興味深いのは、ベトナム戦争を描いた『地獄の黙示録』。米軍のヘリ部隊がベトコンの拠点の村を空爆する時、彼らはワーグナーの『ワルキューレの騎行』を大音量で流します。『ニーベルングの指輪』で、ワルキューレ(戦乙女)らが死んだ兵士の魂を運び去る時の、勇ましい曲ですが、すさまじい機関銃攻撃と逃げ惑う人々の中で流れることで、狂気に満ちたシーンになります。
先日、2本の映画を同じ日に鑑賞しました。『すばらしき映画音楽たち』と『ようこそ 映画音響の世界へ』です。
撮影や編集が終わり、ようやく作曲家の出番。主人公の感情や場の状況に合わせた曲、少し前から不穏な空気を醸し出してシーンをリードする曲、希望を予感させる曲など。その頃には公開日が決まっているので、締切りのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらクリエイトする彼らの力に、ため息が出ます。
音響の方の努力もすさまじい。映画『トップガン』では戦闘機のジェット音が「意外と迫力がなくてつまらない」と、そこにトラやライオン、サルのキーキーといった鳴き声をミックスして爆音を作りました。動物たちの声をミックスした映画は、けっこうあります。
ちなみに音響の分野は、映画会社からなかなか理解されず、『トップガン』の担当者も「音響なんて、録音した音をはめればいい!」と遅延を理由にいったん解雇されたとか。いやはや。
……とあれこれ並べ立てましたが、私は音響でいえば人の「靴音」が大好き。特に石畳を歩く音が大好物です。音楽なら、ハンス・ジマーの『インターステラー』と『ダ・ヴィンチ・コード』がたまりません。
この年末年始、自宅で過ごす方も多いと思います。映画を観る時は、ためしに音だけ消して音楽、音響の効果を実感してみてください。
by Ponko
混声合唱団ノイエ・カンマー・コール